オリンピックシャフトについて
7,オリンピックシャフトの耐荷重量について
バーベルの耐久力の目安は『耐荷重量』よりも『引張強度』が一般的
オリンピックシャフトの耐荷重量についてよくご質問を頂くのですが、バーベルの耐荷重量には統一規格が無く、メーカーによってばらばらの基準で測っている為、異なるメーカーのバーベルを比較する目安として『メーカーの公表する耐荷重量』はあまり意味がありません。
バーベルの強度については規格の無い耐荷重量ではなく、国際規格である引張強度(単位は重量ポンド毎平方インチの略であるPSI)を参考にするのが良いでしょう。
引張強度が高いバーベルほど耐久性が高いのか?
バーベルの耐久性はBIG3のようなスローリフトでの使用と、クリーンやスナッチのようなクイックリフトでの使用で見るべき点は変わってきます。
引張強度はバーベル強度の最も一般的な指針として世界的に使用されています、その為、バーベルメーカーは引張強度のカタログスペックを競争し、更にどのメーカーも同じように「他社のカタログスペックは誇張されている」と主張しています。
確かに引張強度が静的応力に対する耐久性の目安としては有用と考えられます、引張強度の低いバーベルはスローリフトでの高重量使用に耐えられず曲がる可能性があります。
しかし、引張強度は190,000PSIを超えればスローリフトによる応力で曲がりが問題になる可能性はほぼ無くなると言われています。
加えて誤解してはならないのは、「引張強度の高さ=耐久性」という単純な図式にはならないという点です。
バーベルの破損は静的応力で起こるものと動的応力で起こるものがあり、動的応力に対する耐久性には表面処理・スリーブ長・シャフト直径といった要素が特に大きな影響を及ぼします。
静的応力に対する耐久性について、BIG3やパワーリフティング練習のようなスローリフトでの使用であれば190,000PSI以上のものを選んでおけば基本的に問題はありません、190,000PSIを超える競技用のバーベルが曲がった話を聞くと大体原因は「プレートを付けた状態での放置」や「セーフティへの落下」といった誤った使用です。
190,000PSI以上の引張強度を持つバーベルは正しい使用方法さえ守って頂ければ、パワーリフティングジムやホームジムで使用する限り半永久的に使用できます。
動的応力に対する耐久性について、クロスフィットジムのような環境で一日数百回もドロップされるバーベルは、繰り返しかかる動的応力によりシャフトの特定部位が疲労し寿命が極端に縮まります。
この時、直径の太いシャフトは細いシャフトより耐久性が高くなり、スリーブの短いシャフトはスリーブの長いシャフトよりドロップ時の動的応力が低減します。
そしてクロムメッキは鋼鉄の疲労強度に悪影響を与えることが材料科学や航空科学の分野の研究で明らかになっています。
一日に数百回もドロップする過酷な環境でバーベルを使用する場合、まずはシャフト部分がクロムメッキの製品を避けた方がよいでしょう。その上で190,000PSI以上、更に競技用バーベルの製造や競技者向けジムでの使用実績のあるメーカーの製品を選ぶのが確実です。
参考までに、各社のバーベルの引張強度を下記に記載します。
ROGUE社製バーベル引張強度
EURO28mmオリンピックウェイトリフティングバー 215,000 PSI
オハイオパワーバー 205,000 PSI
ステンレスオハイオパワーバー 200,000 PSI
ステンレス28mmオリンピックウェイトリフティングバー 200,000 PSI
ステンレスオハイオバー 200,000 PSI
オペレーターバー3.0 190,000 PSI
ローグバー2.0 190,000 PSI
GYMWAY社製バーベル引張強度
ウェイトリフティング コンペティションバー 216,000 PSI
ウェイトリフティング トレーニングバー 216,000 PSI
パワーリフティングバー 216,000 PSI
クロストレーニングバー2.0 216,000 PSI
ELEIKO社製バーベル引張強度
ウェイトリフティング コンペティションバー IWF公認品 215,000 PSI
パワーリフティング コンペティションバー IPF公認品 215,000 PSI
パワーリフティング コンペティションバー IPF公認品 215,000 PSI
VILLAIN社製バーベル引張強度
VILLAIN(ヴィラン)オールステンレスパワーバー 190,000 PSI